バンクシーを盗んだ男

神戸アートビレッジセンターで上映中の『バンクシーを盗んだ男』を見た。

珍しく感想を書いてみることにする。ちょっと縁あってこの映画を見ることになったのだけれど、実は正直なことを言うとわたしはバンクシーのことはあんまり興味がなかった。というよりも、苦手だった。バンクシーを扱った過去二作品も意識的にスルーしていたほどだ。

さらに言うと、バンクシーは10年ほど前に、わたしが敬愛するパリス・ヒルトンを侮辱した過去(全英各都市48の店舗に並べられていたパリスの歌手デビューCD500枚を勝手に自作のCDと置き換えるパフォーマンスという名の蛮行)があり

『なんだァ?てめぇ……』

という思いを、彼には常々抱いていたくらいなのだ。

 

で、前知識なしでこの映画を見たのだが、結論から言うとそんなアンチバンクシー?気味の人にこそ是非この作品を見てもらいたいと思った。

 バンクシーパレスチナ自治区イスラエルを分断する「分離壁」に描いたグラフィティをめぐって、様々な立場の人間が一言言わせろと言わんばかりに大量に出てくる。作品を壁ごと切り抜いてeBayで売り飛ばす奴や、その行為を批判する者、肯定する者、そもそもバンクシーはもう終わってるっしょとのたまう地元の若手アーティストなど……。

どの立場の人間の言い分にも一理あるような気がしてくるのが面白い。なんというか「そのカオティックな状況こそがバンクシーの狙いなのだ」という感じでもなくて、流石にバンクシーも壁ごと切り抜かれた上に売り飛ばされる(重さなんと4トン!)とは思ってなかったんじゃないか、という雰囲気が全編漂っているのが、ただのバンクシー万歳映画でもないんやなぁ〜と個人的には楽しめた。

きっとパリスも良い映画だと言ってくれるんじゃないかと思う。

 

パレスチナ問題、と聞くとちょっと身構えてしまう方もいるかもしれないけれど、一つのアーティストの行為をめぐって、世界が動いていく様子を丁寧に記録した良いドキュメンタリー作品だと思った。

久々にkavcに行って新開地辺りをうろつくのも楽しかった。

f:id:xiaobingdu:20181005213152j:plain